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水族館運営シム『Megaquarium』レビュー

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2018年9月13日にTwice Circledから発売されたMegaquariumのレビューです。

レビュー時点で筆者は10時間ほどプレイしています。

 

 


簡潔なプラス点・マイナス点

プラス点
  • 近年中々なかった水族館タイクーンものということ自体
  • 豊富な生物の種類と必要十分なグラフィック、実際の特性に基づいた種の個性づけ
  • 上記の個性を気にかけながら水槽づくりをする必要があるシステム
  • 来場者とスタッフの動線を意識して水族館を作る必要がある点
  • 一人称視点で水族館を歩くことができる点
  • 頻繁に行われるアップデート、ユーザーフレンドリーな開発元の姿勢
  • Steam Workshopへの対応を予定していること 
マイナス点
  • 水族館が大規模化するに伴って煩雑になる水族館スタッフの管理要素
  • 装飾等のコンテンツの少なさとそのUIの悪さ
  • (マイナスではない注意点として)経営要素に薄く、現時点では水族館"経営"シムとは呼び難い点

より詳しいレビューは下に記します。また、各プラス・マイナス点についても下の方で詳細について触れているので良ければご覧ください。

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近年稀に見る骨太な"Tycoon"ゲーム

私が『Megaquarium』の存在を知ったのは発売されるひと月ほど前だったと思いますが、各生物に合わせて水槽内の環境を整えたり、来場者のニーズに応える設備を設置して水族館の評価を高めていく、というゲームの流れを見て最初に思い起こされたのは2001年にMicrosoft社から発売された『Zoo Tycoon』という名作動物園経営シミュレーションゲームでした。

日本でも『ズー タイクーン』として2002年に発売された同ゲームは多種多様な動物を飼育し、それぞれの好む環境を飼育場に再現して動物の幸福度を保つ一方で、来場者のニーズにも応えていく必要があるという王道タイクーンゲームでした。のちに発売された拡張パックではイルカショーなども行えるようになる水族館のコンテンツと、恐竜を展示できるようになるものが追加され、近年もXboxでリメイクされるほどの根強い支持を受けています。

少し話が逸れましたが、『Megaquarium』は私の知る限り上記の『Zoo Tycoon』に近しいゲームだと感じます。本作品も"Tycoon"(日本語の「大君」が語源の用語。大君のように自由なマネジメントができるジャンルを指します)を謳っていますし、少なからず意識しているところはあると思います。Tycoon系のゲームでは遊園地経営シムの『Roller Coaster Tycoon』が他に有名なものとして挙げられると思いますが、このところ動物園や水族館もので十分な出来のものはほとんどなく、今年Frontierから発売された『Jurassic World Evolution』も映画の『ジュラシック・ワールド』を前面に押し出した内容で、自由度の高いTycoon系ゲームと呼ぶことは難しいものでした。

 それだけに、まず私が評価したいのはこうして『Megaquarium』という十分な完成度を持った作品が世に出てきたということ自体です。

ゲームの流れ

 現在実装されているゲームモードはレベルごとの目標の達成を目指すキャンペーンモードが1-10レベルまでと、難易度や開始時の状態等を自由に設定して始められるサンドボックスモードとなっています。

ゲームの流れ自体は共通で、生物を入れる水槽とフィルターなどの必要設備を設置した上で生物を配置します。生物のいる水槽からはEcologyポイントとScienceポイントが生み出され、Ecologyポイントで新しい生物、Scienceポイントで新しい設備を研究することができます。

収入は主に来場者からもたらされます。このあたりは今のところ特に設定できる項目などはなく、水族館の大きさに応じて収入も増えていく構造です。設備や生物の購入、スタッフの給与等の他に、水族館の敷地自体を広げるためにも収入が必要です。

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サンドボックスモード開始時の水族館。何もない。

研究できる生物や設備はRankごとに決まっており、Rankを上げるために必要なPrestigeポイントは水槽を設置するとやってくる来場者から得られるので、魅力的な水槽を来場者の目に触れるようにする等満足度を高めることで次のRankを開放し、新たな生物や設備でまた満足度を上げることを目指します。

EcologyとScienceポイントは研究に使われるため蓄積しますが、Rankを上げるPrestigeポイントは蓄積ではなく目標値を現在の値が超えたときに次のRankがアンロックされる仕様になっているため、生物の居住環境が悪い、館内が汚れているなど来場者の満足度を下げるような状態が起きていると中々アンロックすることができないようになっています。

キャンペーンモードではまず水槽の設置やスタッフの雇用などプレイの基礎を学べる他、レベルが進むにしたがってより高度な目標達成(特定の生物を〇頭展示する、ランクを上げる等)に挑むことができるようになります。途中でメッセージログに現れるトレードなどの要素も行わないとクリアできないようになっているので、プレイを学ぶ上でもうってつけでしょう。

サンドボックスモードは文字通りサンドボックスですが、特筆すべきはプレイ中に登場する生物の種類を少なくしたり増やしたりするオプションが用意されていることだと思います。限られた生物で水槽をどう構成していくか頭を悩ませるのが好きなプレイヤーも、自分のやりたいように水族館を作りたいプレイヤーも楽しめる設定になっています。

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サンドボックスモードの設定の様子

 各難易度は開発者がSteamコミュニティで述べているように、Prestigeポイントの取得度合いや費用、機器の故障などを調整するものとなっています。

『Megaquarium』の魅力

 以下では『Megaquarium』の魅力について、最初に挙げたプラス点に触れつつ言及します。

個性豊かな沢山の生物と特性がもたらす複雑な水槽づくり

『Megaquarium』には実に沢山の生物が登場します。その数について公式のSteamページではおよそ100種類と書かれていますが、今後さらに追加される予定とのことなので水族館ファンにはたまらない作品となると思います。

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生物の購入画面。各生物の横のアイコンが特性を示している。

 さて、各生物には実際の生態に合わせて特性が設定されています。温水と冷水どちらを好むか、食べる餌の種類や隠れ家を求めるかどうかから始まり、例えばフグの仲間であれば同じ水槽にヒトデを入れると傷つけてしまう可能性があったり、大きな肉食魚であればサイズ~以下の魚を傷つけてしまうとか、縄張り意識がある魚は同種の魚と混泳できないといった様々な要素を考えて水槽を構成する必要があります。他にもクラゲ類は循環式の水槽を必要としたり、サンゴはライトがなければいけなかったりと、それぞれの特性を考えて水槽を作っていくのが本作の醍醐味の一つだと言えます。

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大きなタイの仲間と混泳するハコフグの仲間は本来なら成長前の大きさでは食べられてしまうが、"Armored"の特性を持っているので食べられずに済んでいる。
動線を意識して水族館をつくる面白さ

実際の水族館のように、『Megaquarium』でも来場者やスタッフの動線を考える必要があります。水槽には"View Rate"というパラメーターがあり、せっかく沢山のポイントを生むような素敵な水槽を作っても、場合によっては来場者が行きにくい場所にあることが原因で十分に目に触れず、ポテンシャルを活かせないことがあります。全ての水槽が来場者にしっかり見てもらえるように、順路を作って上手く水族館を廻ってもらうことが必要です。

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順路は画像のような矢印アイテムで指定できる。

また、水族館の裏側が目に付くところにあると来場者の満足度は下がります。ポンプや掃除用具が水槽の隣にあっても興をそがれないという来場者は稀です。これらを上手く裏側へ隠すと、満足度も見栄えも良くなります。しかしながら来場者と同じようにスタッフも餌やりや掃除、設備のメンテナンスのために館内を歩き回らなければなりません。私がプレイしている最中にも、壁を作ってポンプを隠したはいいものの回り道をしなければならないスタッフの餌やりが間に合わなくなる、というシーンがありました。

スタッフ達は餌の種類によって餌箱と水槽を行き来したり、トイレ掃除のために箒からスポンジに持ち替えたりする必要があります。水族館が広くなりすぎると無駄な移動の時間が増えてしまうので上手い具合に担当エリアを決めて分担したり、修理より掃除が得意なスタッフはそちらの優先度を高くしたり、という管理が求められてきます。

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働くうちに上がったレベルで掃除スキルに特化させたスタッフのRomeoさん。Cleaningの優先度を高めている。能力の下の項目が担当エリア。エリアは自由に指定することができる。
思った以上に楽しい館内散歩

本作ではマウスホイールを使って画面を最大までズームすると一人称視点になり、自分で作った水族館の館内を歩き回ることができます。壁などは当たり判定がなく、本当にただ歩き回るだけなのですが、自分で作った水槽の間を来場者の気分で歩くのはとても楽しいのです。

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入口すぐに作った開放型の水槽。水面のゆがみが雰囲気を良くしている。

『Megaquarium』はオブジェクトを沢山使うゲームということもあって、グラフィックはそれほど高精細ではないものの、生物は特徴を捉えた見た目に仕上がっていますし、人も生物も動いているので、自分で作った館内をいざ歩いてみると期待した以上にクオリティが高く感じられます

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お気に入りのショット。クラゲを見つめる老年の男性。キャラクターの見た目にもそれなりのバリエーションがあるので"水族館っぽさ"を損ねない。

ハードのハイスペック化とともに最近のTycoon系ゲームは3D化が見られるようになって来ましたが、こうしたプレイヤーひとりで満足感を高めるタイプのゲームでは非常に重要な要素であると再確認しました。

信頼できる開発元、今後への期待

開発元であるTwice Circledは2015年に『Big Pharma』で成功を収めたことが記憶に新しいデベロッパーですが、今作『Megaquarium』を「今まで作った中で最高のゲーム」と述べています

開発元は今後クラウドセーブやSteam Workshopにも対応することを明言しています。私としてはmodやゲーム内コンテンツの追加がユーザー側で可能になれば『Cities: Skylines』のようなコミュニティに支えられた息の長いゲームになれるのではないかと感じています。

また13日の発売から既に8回、修正・パフォーマンス向上・バランス調整のパッチがリリースされています。

さらにゲームメディアAutomatonの記事によれば今後3-4ヵ月以内にゲーム内言語に日本語を追加する予定があるとのことなので、日本人プレイヤーにもより易しくなると思われます。

良い意味合いで開発とコミュニティの距離が近い『Megaquarium』の今後には期待が持てそうです。

改善を望むポイント

『Megaquarium』は素晴らしいゲームですが、プレイするうえで不満に思った点も幾つかありました。

まず一つ挙げられるのがスタッフマネジメントの煩雑さです。特に水族館が大きくなる後半になれば、先に述べたようにスタッフの動線も複雑になり、仕事効率が悪くなります。そのような事態を避けるために担当エリアを設定できるのも上で述べた通りなのですが、エリア編集時にしか既存のエリアを確認できない上に、スタッフがどの担当になっているかもスタッフそれぞれの詳細画面でしかわからないため、一覧性が悪くなってしまっています。

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スタッフ一覧。個別に開かないと誰がどこの担当なのかわからない。

他のUIはとても分かりやすいものが多いだけに、この部分をよりストレスフリーな形に修正してほしいと思います。

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修理と餌やりが必要であることを知らせるアイコン。わかりやすい。

他に、装飾のコンテンツが少ないことがあります。生物の種類は言わずもがな、水槽のタイプなども十分なくらいあるのですが、館内や水槽内の飾りや植生はバリエーションが多いとは言えず、またそれぞれのオブジェクトはすべて同じ形状のため見た目が単調になってしまうという問題を抱えています。加えて上の画像でも見られるような床や壁のテーマ数も多くはありません。これらは適用する際もひとマスずつ指定しなければならないので、改善が待たれるところです。

とは言え、このあたりはSteam Workshopへの対応アップデートが来れば一気に解決しそうな問題ではあるので、さほど気にするものでもないかもしれません。

そしてこれはマイナス点ではありませんが、現時点で『Megaquarium』の経営要素は薄いです。入場料や物品販売の価格設定や、広告やターゲット層といったマーケティング要素もありません。そうした凝った経営要素を期待している方は、現時点では購入を見送ったほうが良いでしょう。

 現在のコンテンツ量も発展性も〇の『Megaquarium』

 ここまでのレビューを見て頂いてお分かりのように、『Megaquarium』はこのところリリースされたシミュレーションゲームとしては一番の注目株です。2016年から開発されていたこともあってEarly Accessを経ることなく発売されたので今すぐ購入しても十二分に楽しめるコンテンツの量がありますし、今後Steam Workshopに対応すればそのポテンシャルはさらに増大します。個人的にしばらくの間はTycoon系ゲームのトップランナーであり続けると思います。

『Megaquarium』が"Mega"なゲームになると思われた方は、ぜひ購入をお勧めします。